最終更新日:2026年7月20日
結論
ハワイで不動産を賃貸すると、連邦所得税とは別に、ハワイ州独自の税金がかかります。
- GET(一般消費税):賃貸収入に課税。オアフ島では実効4.712%
- TAT(過渡的宿泊税):180日未満の短期賃貸に追加課税。州10.25%+郡3%
これらは所得ではなく総収入に対する税で、赤字でも課税されます。州へのライセンス登録と定期申告が必要で、納税義務者は管理会社ではなくオーナー本人です。
GETは「消費税」ではない
日本語では「一般消費税」と訳されますが、これは誤解を招く表現です。
日本の消費税やアメリカ本土の Sales Tax は、買い手が負担し、売り手が預かって納付する構造です。売り手にとっては通過するだけの金銭です。
ハワイのGET(General Excise Tax)は違います。事業者が事業収入に対して負担する税であり、法的な納税義務者は事業者側です。買い手に転嫁できますが、それは義務ではなく商慣行です。
この違いが実務で効いてくる点が2つあります。
1. 転嫁した分もGETの課税対象になる
テナントからGET相当額を上乗せして受け取った場合、その上乗せ分も「収入」としてGETの課税標準に含まれます。だからオアフ島の税率は4.5%ではなく、転嫁を織り込んだ4.712%が使われます。
計算根拠は次のとおりです。
- 4.5% ÷ (1 − 4.5%) = 4.712%
家賃1,000ドルに対して47.12ドルを上乗せして請求すると、受取総額1,047.12ドルに4.5%を乗じた47.12ドルが納税額と一致します。
2. 経費が引けない
所得税と異なり、GETは総収入ベースです。修繕費を払っても、管理手数料を払っても、ローン利息を払っても、GETの計算には影響しません。
赤字の年でも、家賃収入がある限りGETは発生します。
GETの税率
州税4%に、郡ごとの上乗せ(County Surcharge)が加算されます。
- オアフ島(ホノルル市郡):4.5%(実効4.712%)
- マウイ島:4.5%(実効4.712%)
- ハワイ島:4.5%(実効4.712%)
- カウアイ島:4.5%(実効4.712%)
現在は主要4島すべてで4.5%ですが、郡の上乗せは条例により変更される可能性があります。申告時点の税率を確認してください。
TATは短期賃貸だけにかかる
TAT(Transient Accommodations Tax)は、180日未満の宿泊提供に課される税です。
税率
- 州分:10.25%
- 郡分(County TAT):3%(オアフ・マウイ・ハワイ・カウアイの各郡)
合計13.25%です。郡分は2021年以降、各郡が独自に導入したもので、比較的新しい制度です。古い情報源には州分10.25%しか書かれていないことがあるので注意してください。
GETと重複してかかる
短期賃貸の場合、GETとTATの両方が課されます。
家賃収入10万ドルの短期賃貸物件で考えると、概算は次のようになります。
- GET:4,712ドル
- TAT(州):10,250ドル
- TAT(郡):3,000ドル
- 合計:約17,962ドル
収入の約18%が、所得税とは別に消えます。これを織り込まずに利回りを計算すると、実態と大きく乖離します。
180日の境界線
180日以上の賃貸契約であればTATは不要で、GETのみです。
ただし、契約期間が180日以上であっても、実態として短期利用が繰り返されている場合には、州税務当局から短期賃貸と認定されるリスクがあります。契約書の形式だけでなく、運用実態も問われます。
ライセンス登録が必要
GETもTATも、申告の前にライセンス登録が必要です。
GET License
ハワイ州税務当局(Department of Taxation)に Form BB-1 で申請します。登録料は20ドル程度と少額です。
オンラインの Hawaii Tax Online から申請できます。
TAT登録
短期賃貸を行う場合、同じく Form BB-1 でTATの登録も行います。GETとTATは同一のフォームで申請できます。
登録番号の表示義務
ハワイ州では、短期賃貸の広告にTAT登録番号を記載する義務があります。Airbnb、VRBO等のリスティングに番号を表示していない場合、罰則の対象となります。
これは実際に取り締まりが行われている項目です。
申告の頻度
年間の税額に応じて、申告頻度が決まります。
- 月次申告:年税額が4,000ドルを超える場合
- 四半期申告:年税額が4,000ドル以下の場合
- 半年ごと:年税額が2,000ドル以下の場合
加えて、年次調整申告(Annual Return)を翌年に提出します。
- GET年次:Form G-49
- TAT年次:Form TA-2
期限は課税年度終了後4ヶ月目の20日、つまり暦年基準なら翌年4月20日です。
定期申告を毎回行っていても、この年次申告を忘れるケースが非常に多いので注意してください。
管理会社に任せていても責任は残る
多くのオーナーは、現地の管理会社にGET/TATの計算と納付を委託しています。
これ自体は合理的ですが、法的な納税義務者はオーナー本人です。管理会社のミスや怠慢によって申告漏れが生じた場合、州税務当局はオーナーに対して課税します。
実務上、次の点は自分で確認する必要があります。
- GET/TATのライセンス番号は自分の名義で登録されているか
- 申告書の控えを毎回受け取っているか
- 年次申告(G-49、TA-2)も提出されているか
- 税率の変更が反映されているか
管理会社が複数のオーナーの物件をまとめて申告している場合、自分の物件がどう処理されているか不透明になりがちです。
罰則
申告漏れ・納付遅延には、次のペナルティが課されます。
- 無申告加算:月5%(上限25%)
- 納付遅延加算:月あたり一定率
- 利息:年利ベースで日割り計算
短期賃貸の無登録営業については、郡条例に基づく別途の罰金が課されます。オアフ島では違反1日あたり数千ドル規模の罰金が設定されており、日数が累積するため極めて高額になります。
ハワイ州および各郡は、Airbnb等のプラットフォームからデータ提供を受けて無登録物件の摘発を進めています。「バレないだろう」という前提は成立しません。
連邦所得税との関係
GETとTATは州税であり、連邦所得税とは別物です。
GETは経費になる
支払ったGETは、Form 1040-NR上で不動産所得の必要経費として控除できます。TATも同様です。
つまり、GET/TATを納めることで連邦所得税の課税所得は減ります。ただし税率が異なるため、全額が取り戻せるわけではありません。
日本での取扱い
日本の確定申告においても、GET/TATは不動産所得の必要経費として計上できます。
ただし、外国税額控除の対象となるのは「所得に対する税」に限られるため、GETとTATは外国税額控除の対象外です。あくまで経費処理となります。ここを混同すると、日本側の申告を誤ります。
実務チェックリスト
- GET Licenseを取得しているか(Form BB-1)
- 短期賃貸の場合、TAT登録も済んでいるか
- リスティング広告にTAT番号を表示しているか
- 申告頻度(月次/四半期/半年)を把握しているか
- 年次申告(G-49・TA-2)の提出を確認しているか
- 管理会社から申告書の控えを受け取っているか
- 利回り計算にGET/TATを織り込んでいるか
- 日本の申告で経費計上しているか(外国税額控除ではなく)
まとめ
ハワイ不動産の税務は、連邦所得税だけを見ていると必ず漏れます。
- GETは総収入課税で、赤字でもかかる
- 短期賃貸ならTATが上乗せされ、合計で収入の約18%
- ライセンス登録と定期申告、そして年次申告が必要
- 管理会社に委託しても責任はオーナーに残る
購入前の利回りシミュレーションで、GET/TATを控除していないケースを頻繁に見ます。表面利回り6%の物件が、これらを織り込むと実質4%台になることは珍しくありません。
数字を作り直す価値のある論点です。
参考条文
- Hawaii Revised Statutes §237 — General Excise Tax
- Hawaii Revised Statutes §237D — Transient Accommodations Tax
- Hawaii Administrative Rules §18-237
- Form BB-1(Basic Business Application)
- Form G-45 / G-49(GET申告)
- Form TA-1 / TA-2(TAT申告)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務助言ではありません。税率および手続きは改正される可能性があるため、実行にあたっては最新の法令および専門家の確認を行ってください。
この記事を書いた人
水上 彰(Akira Mizukami)
米国公認会計士(USCPA)、IRS登録税務士(EA)、税務修士(LL.M. in Taxation, Boston University)。PwCニューヨーク事務所にて国際税務実務に従事した後、現在は再生可能エネルギー事業会社の日本法人にて財務・税務責任者を務める。日米クロスボーダー課税、プロジェクトファイナンス、不動産投資を専門とする。
より実務的な内容はnoteにて公開しています。
