日本とアメリカの税務制度の特徴と違いをわかりやすく解説
国際的にビジネスを展開したり、海外移住を検討したりする際に避けて通れないのが「税金」の話です。
今回は、日本とアメリカ(米国)の税務制度について、それぞれの特徴と違いを整理してご紹介します。私は日本と米国でそれぞれの税務の実務を経験してきました。
🗾 日本の税務の特徴
- 居住者課税主義(Residency-Based Taxation)
日本では、1年以上住んでいるなど「居住者」とみなされると、日本国内だけでなく全世界で得た所得が課税対象になります。 - 法人税の実効税率は約30%前後
法人税(23.2%)に加えて地方法人税や事業税などが加算され、中小企業で約30%、大企業では最大35%弱になることもあります。 - 消費税は全国一律10%(一部8%)
日本では「消費税」として全国一律に課税されます。軽減税率制度により、食品や新聞には8%が適用されます。 - 相続税・贈与税が高い
相続税は最大55%。基礎控除額が比較的小さく、資産規模によって大きく課税される傾向があります。 - 源泉徴収制度が強い
給与所得などの大半は会社があらかじめ税金を差し引いて納税する「源泉徴収」方式。自分で確定申告をする必要は少ないです。
🦅 米国の税務の特徴
- 市民課税主義(Citizenship-Based Taxation)
アメリカでは「国籍」を持っているだけで、世界中の所得に対して課税されます。これは世界でも極めて珍しい制度です。
米国市民権・グリーンカード保持者は、たとえ海外に住んでいても申告義務があります。 - 法人税は連邦で21%、州によって加算
2018年の税制改革により、連邦法人税率は21%に引き下げられました。ただし州ごとに法人税が別途課されるため、実効税率は25〜30%前後になります。 - 消費税はなく、州ごとのSales Tax
日本のような全国一律の消費税は存在せず、州や市によってSales Tax(売上税)の税率が異なります。例:カリフォルニア州では8〜10%、オレゴン州は0%。 - 相続税・贈与税の控除額が非常に高い
2025年までは、約1,300万ドル(約20億円)まで非課税です。富裕層に対する課税を抑え、資産移転を促す政策的意図があります。 - 自己申告(Self-Assessment)文化
米国では、サラリーマンでも確定申告をするのが一般的です。タックスリターン(確定申告)は義務とされ、多くの人が税理士やソフトを使って自分で行います。